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リトミックで育つ聴く力 乳幼児期に大切な学びとは

3 日前
読了時間: 7分

「先生のお話を聞いて動く」


大人にとっては当たり前に見えるこの行動も、乳幼児にとってはとても複雑です。耳で音を受け取り、自分に向けられた言葉だと気づき、意味を理解し、何をするか考え、実際に身体を動かす。そこには、注意力、記憶力、判断力、集中力、行動をコントロールする力が関わっています。


だからこそ、乳幼児期の「聞く経験」は大切です。静かに座って話を聞かせるだけではなく、遊びや音楽活動の中で、自然に耳を傾ける場面を重ねていくことが、子どもの学びの土台になります。


リトミックには、その機会がたくさんあります。


絵本のよみきかせをきく子供達 仕掛け絵本

「聞く」はいくつもの力が重なった行動です


子どもが先生の言葉を聞いて動くまでには、いくつものステップがあります。


  • 先生の声に気づく

  • 自分に関係する言葉だと分かる

  • 言葉の意味を理解する

  • 何をすればよいか考える

  • その行動を覚えておく

  • 身体を動かす

  • 必要なら途中で止まる


たとえば、「お名前を呼ばれたら、先生のところに来てね」という声かけがあります。子どもは、ただ名前を聞いているだけではありません。


自分の名前を待つ。呼ばれたことに気づく。今が自分の番だと理解する。先生のところまで歩く。場合によっては、友達が動いていても自分の順番まで待つ。


この短い活動の中にも、聞く力、待つ力、考える力、動きを調整する力が含まれています。


「人の話を聞く力」は、ある日突然身につくものではありません。乳幼児期から、小さな経験を何度も積み重ねることで育っていきます。


リトミックは音楽だけを学ぶ時間ではありません


リトミックというと、音感やリズム感を育てる活動という印象が強いかもしれません。もちろん、それは大切な目的です。


でも実際のレッスンでは、音楽的な力だけでなく、生活や集団活動につながる学びも育っています。


たとえば、子どもたちはレッスンの中で次のような経験をします。


  • 先生の声を聞く

  • 音楽の始まりに気づく

  • 音が止まったら身体を止める

  • 速い音、遅い音、高い音、低い音を聞き分ける

  • 友達の動きを見ながら自分も動く

  • 自分の番まで待つ

  • 聞いたことを覚えて行動する


音楽に合わせて歩く活動でも、子どもはただ動いているだけではありません。ピアノの音が変わったら走るのか、止まるのか、ゆっくり歩くのかを判断しています。


音を聞いて、身体で反応する。先生の言葉を聞いて、意味を考える。友達の様子を見ながら、自分の動きを調整する。


こうした一つひとつが、リトミックで育つ聴く力につながります。


畳の部屋で、青い服の女性が赤いフタの瓶を差し出し、幼児が笑顔で手を伸ばしている。

ものを配る場面にも学びがあります


レッスンで楽器や教材を配る場面は、よくあります。タンバリン、鈴、スカーフ、カード、絵本の小道具など、活動に合わせてさまざまなものを使います。


このとき、ただ「はい、どうぞ」と配ることもできます。でも、少し声かけを変えるだけで、そこは「聴く力」を育てる場面になります。


たとえば、同じ楽器を配る場合でも、方法はいくつもあります。


  • 「みんな取りに来てね」と伝えて、一斉に取りに来る

  • 一人ずつ名前を呼んで、呼ばれた子が取りに来る

  • 「お名前を呼ばれたら来てね」と先にルールを伝える

  • 「歩いて取りに来てね」と動き方を加える

  • 「鈴を一つ取ったら、お席に戻ってね」と次の行動まで伝える


同じ「受け取る」という活動でも、必要な力は変わります。


名前を呼ばれてから動く場合、子どもは自分の名前を聞き分けます。そして、今が自分の番だと理解します。先生のところへ行き、楽器を受け取り、また戻る。短いやり取りの中で、聞いて、覚えて、行動する経験をしています。


ここで大切なのは、難しい課題にすることではありません。年齢や発達に合わせて、少しだけ聞く必要がある状況をつくることです。


最初は名前を呼ぶだけで十分です。慣れてきたら、「呼ばれたら来る」「一つ取る」「戻る」など、少しずつ条件を増やしていきます。


「ちゃんと聞いてね」よりも環境づくりが大切です


子どもに何度も「ちゃんと聞いてね」と言っても、すぐに聞けるようになるわけではありません。乳幼児期の子どもには、聞きたくなる状況、聞かないと分からない状況が必要です。


たとえば、カードを使う活動を考えてみます。


全部のカードが同じ色なら、子どもは先生の言葉を聞かなくても取ることができます。でも、赤、青、黄色のカードが並んでいて、「赤いカードを一枚取ってね」と言われたら、聞く必要が生まれます。


さらに慣れてきたら、こんな声かけもできます。


  • 「先生が『どうぞ』と言ったら取ってね」

  • 「○○ちゃんは青を取ってね」

  • 「赤いカードを取って、タンバリンの横に置いてね」

  • 「音が止まったらカードを持って戻ってね」


条件が増えるほど、子どもは先生の言葉や音の合図に耳を傾けます。


もちろん、難しくしすぎると楽しい活動ではなくなってしまいます。大切なのは、子どもが成功できるくらいの小さな段階を用意することです。


聞けた。分かった。できた。


この経験が積み重なると、子どもは「聞くこと」に前向きになります。聞くことは叱られないための行動ではなく、遊びを楽しむための手がかりになっていきます。


斜め上から見た赤と青のカードを選ぶ幼児の手
条件を聞いて選ぶ活動は、理解して行動する力を育てます。

聴く力は生活や学びの土台になります


リトミックで育つ「聴く力」は、音楽の時間だけで使うものではありません。


保育園や幼稚園では、先生の話を聞いて活動に参加します。家庭では、保護者の言葉を聞いて生活の流れを理解します。友達と遊ぶときにも、相手の言葉を聞くことが関わります。


小学校に入ると、授業の中で先生の説明を聞く場面が増えます。「教科書を開きましょう」「この線まで書きましょう」「終わったら手を膝に置きましょう」など、聞いて行動する力が必要になります。


乳幼児期のリトミックで行う活動は、直接「授業の練習」をしているわけではありません。それでも、音を聞いて止まる、合図を待つ、名前を呼ばれて動く、順番を待つといった経験は、集団の中で過ごす力につながっていきます。


特にリトミックのよさは、子どもが楽しみながら経験できるところです。


「聞かなければならない」と身構えるのではなく、音楽があるから聞きたくなる。次に何が起こるか楽しみだから、先生の声に耳を向ける。友達の動きを見ながら、自分もやってみたくなる。


その自然な流れの中で、子どもは少しずつ聞く力を育てています。


レッスン全体を「聞く経験」として考えます


聴く力を育てるために、特別なトレーニングだけを用意する必要はありません。むしろ、普段のレッスンの中にある一つひとつの場面を、丁寧に見直すことが大切です。


たとえば、次のような場面です。


  • 入室したときのあいさつ

  • 活動を始める前の声かけ

  • 楽器や教材を配る時間

  • 音楽を始める合図

  • 止まる合図

  • 活動を切り替えるときの言葉

  • 絵本を読む時間

  • 友達の活動を見る時間

  • 帰る前のあいさつ


どの場面でも、「子どもに何を聞いてほしいのか」を考えることができます。


音を聞いてほしいのか。言葉の意味を理解してほしいのか。自分の名前に気づいてほしいのか。合図を待ってほしいのか。聞いたあとに、どんな行動につなげてほしいのか。


この視点を持つと、声かけが変わります。活動の順番も変わります。子どもにとって分かりやすく、聞きやすいレッスンになります。


保護者に伝えるときも、「今日はタンバリンをしました」だけで終わらせず、「お名前を呼ばれるまで待つ経験をしました」「音が止まったら身体を止める活動をしました」と伝えると、リトミックの価値がより伝わります。


リトミックレッスンでピアノに合わせて元気に走る子供達

小さな「聞けた」がこれからの力になります


リトミックは、音楽を楽しむ時間です。同時に、人の声を聞く、音の変化に気づく、合図を待つ、聞いたことを理解して行動する時間でもあります。


乳幼児期の子どもにとって、聞く力は机に向かって身につけるものだけではありません。遊びの中で、音楽の中で、人とのやり取りの中で育っていきます。


何気ない声かけ。楽器を配る時間。名前を呼ばれる瞬間。音が止まって、身体も止まる経験。


その一つひとつが、子どもの「学ぶ力」や「人と関わる力」の土台になっていきます。


リトミックのレッスンを組み立てるときは、「今日は何をするか」だけでなく、「この活動で子どもは何を聞くのか」「聞いたあとに何を経験するのか」まで考えてみたいものです。


小さな「聞けた」「分かった」「できた」の積み重ねが、子どもの未来の学びを静かに支えていきます。


 
 
 

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